2010/05/01

行政のコストを削減する目的ではなく、利用者の利便性を増す視点で設計した電 子サービスをネットで提供する。その果てに本当の「光の道」があるんじゃない かな。

原 口一博総務大臣(@kharaguchi)が「光の 道」なる構想を提案しているそうだ。それに対するフリージャーナリストの佐 々木俊尚(@sasakitoshinao) さんや、同じくジャーナリストの町田徹さ んの反論に「もっともだ」と思うところがあったので、未来の自分向けに書き残しておく。

実は今のところまだ提案の原文は読んでない。大まかには、光ブロードバンドを日本全国津々浦々、隅々まで敷設して、全国民に快適なインターネットア クセスのインフラを提供しようって話らしい。

で、その提案に対して孫正義Softbank 社長(@masason)が全面支持を表明している、と。

全てのサービスはインフラのキャパシティを超えて提供できない、がボクの信条である。だから大変に結構な印象を受けた。「光の道」ってコトバは字面 も響きも明るくていいし。

ただフリージャーナリストの佐 々木俊尚(@sasakitoshinao) さんや、同じくジャーナリストの町田徹さ んの反論を読むと、どうも「違う」ようだ。目指す方向はともかく、手段の選択としておかしい。

それぞれの主張は:

ボクが読み取った主張の骨子は大まかには:

  • 光回線の敷設率は人口比で90%に達しており、世界水準としてもトップである
  • 光回線の普及率(実際に契約している世帯の率)は30%に達していない
  • 敷設率90%に対して普及率が30%とあまりに低いのは「光の道」が十分に行き渡っていないのが原因ではない
    • 今、ブロードバンドを利用していない世帯にとって、それを利用する「必要」がないから契約されていない (必需的なサービスが提供されていない)
    • マスメディアのネガティブキャンペーンによる「ネットは怖い/危ない」の刷り込みがされてしまっている
  • 光回線の敷設がされていない10%の大半は山間部や島嶼など人口密度が薄い地域で、しかも面積比では50%に達する
    • 大規模なインフラ投資をしても採算が取れない
  • メタルケーブルを光ケーブルに置き換えることでインフラコストが下がる、という孫正義氏の主張は無根拠 (適切な試算比較が提示されていない)
こんなところだろうか。さすが、このあたりの整理はジャーナリストらしく手堅い仕事で説得力がある。

孫正義社長が「光の道」構想で提出したプレゼン資料は総務省のホームページに「光の道の実現に向けて 平成22年04月20日 ソフトバンク株式会社」としてPDFファイルが掲載されている。佐々木俊尚さん, 町田徹さんの指摘を踏まえて読むと、目指す姿は共感できるけれど、その実現方法としての『光の道』に関しては実効性に大きな疑問があり、検証も不足してい る。

思うに、やっぱりキーになるべきは「サービス」なんだと思う。それも「必需」と言われるようなサービスを政府が提供していくこと。別に特定のサービスを ネットに限定する必要はなにもない。ただリアルで提供されているサービスを、ちゃんと「使い易く」ネットでも提供したらいい。

なにかと「公平性」が云々言われるけれど、既存のサービスのレベルが落ちてないならいいじゃないか。リアルの側では既存のサービスを提供しつつ、ネットの 側ではより利便性の高いサービスを提供する。

例えば統計情報を紙として出しつつ、ネット側ではオープンなデータとして提供するとか。何かと複雑なお役所の手続き(一つのイベントに対して幾つもの申請 手続きを、複数の窓口に対してしなくちゃいけないコトが多い)をワンストップで提供するとか。

行政のコストを削減する目的ではなく、利用者の利便性を増す視点で設計した電子サービスをネットで提供する。その果てに本当の「光の道」があるんじゃない かな。

blog comments powered by Disqus