2006/09/18

中国、あるいは難儀なお隣さんとの付き合い方について

 中国と日本。
 なかなかに難しい二国である。

 曰く、政冷経熱。
 曰く、日本の資源をかすめとりながらも盗人猛々しく胸を張っている。
 曰く、多額のODAを受けながらそれを他の国への援助や軍事費に流用している。
 曰く、デッチあげと情報操作で日本を悪役に仕立て上げている。
 曰く、大規模な反日デモを知らぬ顔で見過ごすばかりか、扇動すらしている。
 曰く曰く──

 彼の国とわが国の間にそびえる問題を挙げていけば枚挙にいとまない。

 だから、あんな国と国交を篤くしても国益を損なうばかりである。とっとと手を切ってしまうべきである。
 アジアにはもっと目を向けるべき国があるはずだ。
 そも、武力を持たない日本が、軍事大国の中国と対等の関係を築けるはずがない。

 ボクの身の回りで、そういう意見をちらほら見かけるようになってきた。
 でも、果たしてそうだろうか?

 『潜在的脅威とこそ笑顔で手を結べ』とは、交渉ごとの──国同士で言うなら外交の基本の一つである。
 手を切ってしまえば、後はいつ戦争になるかわからない緊張関係が待っている。相手の情報を得る手段は極端に制限され、利害が衝突したときに落としどころを見出す機会も得難くなる。

 日本が武力を外交カードとして持ったところで、中国ほどの大国と戦争してどれほど持ちこたえられるだろう?  アメリカのバックアップがあるといっても、それはアメリカの国益を保持する目的のためであって、相応の見返りは求められるだろう。戦争が終わる頃には、とても返済できないほどの負債をアメリカに対して抱えることになるはずだ。
 だが、それもよしんばアメリカが中国を切って日本をとった場合のことだ。
 いざその状況になったとき、中国と日本を載せた天秤は果たしてどちらへ、どれほど傾くだろう?

 さらに視点を変えて経済のことを考えてみよう。
 中国という巨大な市場は、これから重みをいや増していく。数年前から言われ続けてきたことだし、これからしばらく、よほどのことがなければ変らないだろう。
 その巨大な市場から締め出されたら。  軍事力の登場を待たずして、たちまち日本の経済が立ち行かなくなるのは火をみるより明らかだ。
 市場から得られるはずの利益を失う。それだけでなく、地理的に近く安価で優秀な人材に頼ることもできなくなる。
 それでも日本の経済を支えられると言うなら、今すぐにでも会社を立ち上げるべきだ。アナタはビルゲイツなどおよびもつかない巨万の富を得られることだろう。──もし、それが実現可能だとしたら、だけど。

 もちろん、日本と中国の間に山積みになっている問題は多い。
 目をそむけおべっか笑いを浮かべ、中国の持ち出す無理難題を黙って受け入れるなんて論外だ。言うべきことは言わなくちゃいけない。  でも。
 問題というのは真正面から向き合って一つ一つ解決いくものであって、それをあげつらって『だからヤツらはダメなんだ』と溜飲をさげるものではないはずだ。

 問題を──まして武力の背景を抜きに国家間の問題を解決するには時間が掛かる。コストも掛かるし、知恵もいる。
 それでも。
 たとえ、そうであっても、日本は中国との間に抱える問題を解決していかなくちゃいけない。
 そして、そのためにはこの難儀なお隣さんと笑顔で握手を続けていかなくちゃならないのである。

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