2009/10/08

Winny裁判 - 2審で逆転無罪の判決は、金子さんだけでなく全てのソフトウェア開発者の勝利であるというお話。

いわゆるWinny裁判について、高等裁判所による2審で逆転無罪の判決になったというニュース。当の本人である金子勇さんにとってはもちろん、ソフトウェア開発者の各位にとっても朗報だと思う。

WinnyというのはP2P技 術を基盤として匿名性の高いファイル交換ネットワークを実現するソフトウェアである。平たく言えば自分も相手も誰だか分からないまま、お互いにファイルを 交換しあえるソフトウェア。

ひととき、色んなコンテンツ(動画やゲームや、その他その他)が「タダで手に入る」ってわけで、えらく流行ったのだけど、そこで流通していたコンテ ンツの少なからずが「著作権法で保護されているもの」(要するに勝手に流通させたら著作権の侵害)だったり、どこからか流出した機密情報であったりして問 題視もされていた。

それで京都府警がやっきになって頑張って、数名の利用者と、なぜだか開発者の金子さんを検挙して今に至る、というのが現在の経緯。金子さんに問われ た罪は「著作権侵害という犯罪をWinnyを開発したことにより幇助した」というもの。

「Winnyさえなければ、あれほどカジュアルかつ広範囲に著作権侵害が起きなかっただろう」というロジックで、一見すると分からなくもないように 思える。

ただ、このロジックがまかり通ってしまうと「ソフトウェアを開発/公開したら、それが悪用された」といった場合に、いちいちソフトウェア開発者に 「幇助罪」が適用されてしまうというコトになる。ソフトウェアというのは往々にして開発者の意図なんか遠く離れて、好き勝手に使われるものであるし、これ が例えばオープンソースソフトウェアであればどんなソフトウェアの中に流用されるか分かったものじゃない。

そんなわけで広くソフトウェア開発者たちが行方に注目していた裁判でもあったのだ。金子氏やP2P技術者のみならず、ソフトウェア開発者の全てが潜 在的に負っている「業」に関する裁判だったから。そして、その結果、2審では逆転無罪。

毎日新聞社の記事のよると、審判の骨子は:

  • 著作権侵害のほう助の成立には、侵害する者が出る可能性があると認識していただけでなく、ソフトを侵害の用途で使用するようインターネッ ト上で勧めていることが必要。
  • 被告は、侵害の可能性を認識はしていたが、ネット上での発言を見ても、著作権侵害の用途で使うよう勧めていたとはいえない。
  • 原審のように認めると、ソフトが存在する限り、無限に刑事責任を問われることになるので、罪刑法定主義の観点から慎重に判断しなければな らない。
ウィニー:2審は逆転無罪 著作権侵害ほう助認めず - 毎日jp(毎日新聞)

特に社会的には3点目の原審のように認めると、ソフトが存在する限り、無限に刑事責任を問われることになるので、罪刑法定主義の観点から慎重 に判断しなければならない。という指摘は非常に重要なんである。大事なことなので繰り返してみた。

とにかくも @dankogai さんのこの国でソフトウェアを書く人すべてのための勝利だ。(404 Blog Not Found: #news - Justice is done! - Winny二審は逆転無罪)というハ シャギぶりは決して大袈裟なことではなく、文字通りの意味なのだと、そういうお話。台風一過、実におめでたいお話なのである。

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