ひろってください
8月の終わり、やけくそのような土砂降りの夕立の中。
駅前広場の端っこ。
「やっと声かけてくれた」
「やっとって。そりゃ、この雨の中、傘もささないでダンボール箱に座りこんでじーっと見られてたら声もかけるわ。で、なにやってるの?」
「これ」
「『捨て人です。拾ってください。炊事洗濯掃除なんでもやります』って、なに、この看板?」
「読んだままです。拾ってください」
「なにそれ? 男の子なんか拾うわけないでしょ。莫迦なこと言ってないでとっとと帰んなさい」
「帰るトコないんです。仕事辞めちゃって。寮住まいだったから──」
「な、なによ。そんな捨てられた子犬みたいな目したって拾わないからねっ」
「お姉さん、子供のころ捨て犬見ると拾わずにいれなかったタイプでしょ?」
「──う。どうしてそれを」
根負けしたようにため息。
ざぁざぁと降りしきる雨の音。
解説
唐突に絵が浮かんで書き出してみた。
決して、仕事やめて主夫したいなぁとか思ったわけではない。ないったらないったらないのである。
──しかし、いい加減、久方ぶりの更新がこれってのは如何なものか。
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