『波のうえの魔術師』は一粒で三度美味しいんである
連休中、ずっと更新をサボって関西へ旅行していた。
で、連休明けたら明けたで恐ろしい量の仕事が待ってたりもして。
というわけで。(ヤ、なんも関係ないけども)
仕事でどろどろになった身体をベッドに沈めて『波のうえの魔術師』を読んだ。
フジテレビの木曜日10時枠ドラマで2002年 04/11~06/27に掛けて放映された『ビッグマネー! ~浮世の沙汰は株しだい~』の原作本としてご存知の方も多いかもしれない。
とりあえずざっとあらすじを、文庫版の背表紙から。
あの銀行を撃ち落せ! 謎の老投資家が選んだ復讐のパートナーはフリーターの<おれ>だった。
マーケットのAtoZを叩き込まれた青年と老人のコンビが挑むのは、預金量第三位の大都市銀行。知力の限りを尽くした「秋のディール」のゆくえは……。
新時代の経済クライムサスペンスにして、連続ドラマ化話題作。
ボクなりに言うと株式市場を舞台に繰り広げられるコンゲームもののお話なんである。
市場という動きの読めない怪物を相手にした駆け引きがなかなかに熱い。
ただ、主人公であるフリーター<おれ>の成長物語として読んでもいい。或いは株式市場に関する初歩の初歩の入門書として読んでもいい。
いわば一粒で三度美味しい小説なのだ。
で、どの辺が面白かったかというと。
まず紹介でも書いた通り『一粒で三度美味しい』。
それから『描写がさらっとしている』のである。それでいて『社会や人の暗い面』を避けているわけではない。
適度に乾いていて、適度な湿り気もある。すっきりさらさら読めるのでストレスは感じないけども、軽いわけではないという感じなんである。
こういう感じを表すのには──やっぱり『さらり』と言う単語が一番しっくり来る。
人間性を掘り下げるとか、その場にいるのと同じくらいの情報量でみっちり書き込まれてなきゃいけないという信条の人にはオススメできないけども。
でも例えば『ライトノベルは食傷気味だけど本格ミステリやSFはちょっと』──という人には心地よくお腹を満たしてくれるんではないだろうか。
もちろん、本格ミステリやSFものをバリバリ読まれる方にもオススメ。
『さらり』っぷりばかり強調したけども、お話の組み立て方はきちんとエンタテイメントというものをおさえつつコンゲームを描いている。
というわけで総合評価。
描写は『さらり』でストレスがない。でもお話の組み立てはエンタテイメントの基本をおさえている。
さらに『一粒で三度美味しい』。
というわけで買い、である。
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