RMT市場の創出および課税スキームに関する研究会
『RMT市場の創出および課税スキームに関する研究会』なんて、通産省で立ち上げてくれないものかとふっと思ったりして。きっかけは以下の議論。
ちなみに、RMTというのはReal Money Trading(現実の貨幣による取引)の略で、特にネットゲーム内のアイテムやゲーム内貨幣,時にはキャラクターなどを現金で売買する行為全般のことをさす。(コンピュータWiki - リアルマネートレーディング参照)
一般的なプレイヤーにはゲームの面白みを損ねるヨクナイコトだと認識されていて、多くのネットゲームでも規約により禁止されている。
ただ、需要があれば供給があるのがシホンシュギというものであって年々市場規模は大きくなり、Wikipediaの記事によると、2007年02月22日現在の記述では150億円に達しているという。
で、みんなが悪い悪いというので改めて具体的には何がヨクナイのかというのを問いかけてみたのが上に挙げた記事の二つ目。それで、帰ってきた回答が次のようなものである。
- 消費者が適切なサービスを受けられない
狩場の独占,PKの横行,RMTの波及としてのゲーム内経済のインフレなど、一般プレイヤーがゲームの楽しみを著しく損ねる。多くのプレイヤーが最初に挙げる問題はこれに当たるだろう。 - 円の海外流出
ゴールドファーマーと呼ばれる海外のRMT業者・組織が日本のプレイヤーに対してRMTを行うことにより、無課税で海外に円が流出してしまっている。これは経済の観点から言って損失といってよく、その額もそろそろ無視しがたくなってきている。 - 詐欺などの温床になる
RMTは今のところ、ほとんどが地下経済と化しており、地下経済の常として詐欺などの温床になりやすい。実際のところ、被害にあったプレイヤーは少なくない。 - 暴力団等の資金源になる
同じく地下経済の常として、暴力団等の非合法な組織の資金源になる可能性があり、実際に幾つかの調査ではそうなっているという結果もある(らしい)。
確かに困った問題である。
ここにチート行為などのデータ改竄行為が重なれば、もう制御不能で適正なゲーム環境を維持することは至難を極める──というのがゲーム会社と多くのプレイヤーの主張であろうと思う。
こうした行為がゲーム会社,プレイヤー共に迷惑きわまりないことは確かだし、放置できないだろう。
だから、勢いみんな『RMTをいかに防ぐか?』という方向に議論が行き勝ちになる。そりゃ迷惑をこうむってる立場からすれば自然な発想だ。
ただ、ボクは逆にRMTを経済の中に組み込んでいくための議論をしていった方がいいんじゃないかと思う。いわゆるネットゲームを一切プレイしないので、それゆえの無知ということもあるとは思うけれど。
挙げられた4つの問題のうち、最初の一つ(消費者が適切なサービスを受けられない)というのは明らかにゲーム会社による調整の余地がある。
実際、最近のネットゲームでは最初からRMTの予防を織り込んでシステムを設計し、一定の効果を挙げているという話も聞く。
また、チート等のデータ改竄によりゲーム内経済のバランスが崩されるという点に関しては、作る側がチョロいんじゃないかとも思う。例えば、Amazonで商品の情報が改竄されてビジネスモデルが崩壊した、なんてコトが仮にあったとしたら、その責任の一端は間違いなくAmazonにも求められるはずだ。もちろん、Amazon側もそんなことは絶対にないようにデータを保護している。──ちょっと乱暴なたとえだけど、そういうコトだ。
ともかくも、この問題については『RMTが絶対悪』なのではなく『RMTを受け容れるにしろ、受け容れないにしろ、それを前提としたシステム構築をサービスプロバイダがすべきである』と結論づけたい。少なくともサービスを提供する側は、自分の提供するサービスについて、そういう自覚を持つべきだと思う。(だからといって、規約に反してRMTをやるコトが良いという意味ではない,それはそれで契約違反だから)
さて、残りの三つの問題について。
この問題のいずれにも共通するのは『地下経済』に顕著な現象である、ということである。つまり当局の管理下にないところで経済行為が行われているから起こりやすいということ。
なら最も効果が高そうな対策はといえば、RMTによる経済行為を日の光の下に出し、きちんと課税するためのスキームと制度を整えることである。というわけで、タイトルの『RMT市場の創出および課税スキームに関する研究会』に辿り着く次第。
実際のところは、現在だけを見れば対象の経済規模はまだまだ150億円と小さいため政府が重い腰を上げるインセンティブは少ないのだけども。
ただ、いまや日本の経済資源の貴重な一つとして挙げられるようになった『コンテンツビジネス』分野においてゲームってのは決して小さくないはずである。そして、仮にRMTについて整った環境で行われた場合には、そのビジネスモデルの幅を広げることは明確で、きちんと育てていけばもしかしたら主流になってくるかもしれない。
そして上手くいけば、引きこもってネットゲームに夢中になる若者にも生計を立てる道が出てくる(かもしれない)のである。非就労者の比率も下がって万々歳ではないか。
──なんて、もちろん絵に書いた通りに夢一杯の世界が実現するとは限らないけれども。ただ、一つの未来としてはチャレンジの対象としてもいいと思うし、成長の可能性は感じられる。
実は最近、少しずつ話題になってきているSecond Lifeの取っているビジネスモデルが、ほぼこれに一致するんである。そして、成功の兆しは見えはじめていて、アメリカではすでに課税スキームに関する議論も始まっている。
ヒットしてから乗る、という形ではアメリカには勝てない。
乗るなら準備はお早めに、ということであり、もしかするとそれは今なのかもしれないんである。
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